龍樹菩薩 −(150〜250頃)

梵語ナーガールジュナ。南インドの生まれ。大乗仏教 の教学の基盤を確立した。インドはもとより中国、チベットにおいても大きな影 響を与え、日本では古来、八宗の祖(華厳宗、法相宗、律宗、成実宗、倶舎宗、 三論宗、天台宗、真言宗)とされる。また『十住毘婆沙論』の「易行品」を著し たことで、浄土教の祖師とされる。その他の著作に『中論』『十二門論』『大智 度論』などがある。真宗七高僧の第一祖。(「浄土真宗聖典」)

龍樹は、若くして哲学・天文・地理・医学などのあらゆる学芸を身につけたと 伝えられるが、その、若き日の物語である。
あるとき龍樹は親友三人と語り合った末、「お互いに学問は学び尽くしたし、諸芸にも達した。これからは人間の歓楽の 頂上を極め、楽しもうではないか。」と、決めた。そこで四人は仙人について隠身の術を学び、夜毎王宮に忍び込んでは後宮の美女を心のままに情欲の犠牲とした。当然、城中は大騒ぎになった。「隠身術者の仕業に違いない。すぐに城門を閉じよ。」 兵士たちは刀剣を振るってあたりかまわず縦横に切り払った。これでは隠身の 術も効き目がない。たちまち三人の友は切り殺された。龍樹はすばやく王の脇に 身をひそめたので、危うく難を免れた。友の惨死を目のあたりにした龍樹は、情欲こそ堕落の道、災いの根元であるこ とを痛切に感じ、ついに出家を志す身となったという。

小乗仏教にあき足らず、仏法の中に大乗無上の法を見いだし、これを弘めることに心を尽くし、人々から菩薩と敬われた。
浄土真宗は『十住毘婆沙論』の「易行品」、『 十二礼 』を聖教とする。(「解説 礼拝聖典」)